お客様がいらして下されば、嬉しい。
そのお客様がまたいらして下さったら、とても嬉しい。
「また来たよ」が「ただいま」になったら、とてもとても嬉しい。
そんな当たり前だった感情が、一気にあふれ出し
不覚にも目頭が熱くなった。
合宿でウチを利用した学生さんが、この春、社会人になり、
やっと出かけられるようになったこの連休に
「ここに来たかったんです」と笑顔で玄関を入ってらした。
お申し込みの電話では、何もおっしゃっていなかったので
不意打ちの嬉しさで胸がいっぱいになった。
冬からの不安定な毎日、
何か月も続いた誰もいない館内、
不安を抱えての営業再開。
世界中から笑顔が消えてしまったような日々を
すべての感情や思いを封印して生きてきた。
彼らの笑顔が、そのつらかった日々を
爽やかな風で一掃してくれた。
お土産のペコちゃんの笑顔が
弱った樹木に与えられた養分のように
館内に染み入り、行き渡り
また、香嶽楼が動き始めた。