普段、夕食後に出かけることなど、会議以外めったに無いシャチョーが
珍しく玄関に向かうので、声をかけると
「裏に蛍が出ているらしいから、見に行く」という。
あわてて上着を引っ掛けてついて行ってみれば
うっすら霧も出ていて、路地は心細いほどほの暗く
今年新調した朱いのぼりが揺れている。
ほんとかなぁ、と、とぼとぼ歩いていくと
お稲荷さんに登る階段も見えない闇。
「どこにいるの」と声をかけると、境内の中ほどに進んでいる様子。
どう?と、声をかけながら行くと
目の前はまるで幻想の中。
小川に沿って、光が浮遊している。
人口の光とは全く違う、緩やかな点滅が
足元から、目の高さまで、いや、ひとつふたつはもっと高く。
その数、ゆうに100以上、
手を伸ばせば、その指先をかすめ、光が飛んでいる。
声をだせば、消えてしまいそうな淡い光に
感嘆の声も飲み込み、しばし、佇む。
いろいろな条件が重なってのことなので
いつも見られるとは限らないけれど、
宵のお散歩、蛍に会いに、
どうぞ、皆さま、お出かけになってみてください。