ドキッとするほど濃い香りが、
走っている車の中、
吹き込む風に紛れ込んできた。
あまりの濃厚な誘いに、一体どこから、
だれが呼んでいるのかと、車をとめて見れば、
川に沿ってアカシアの林。
その甘い香りは、そのまま密の香りとなる。
アカシアの蜂蜜は、来月の中ごろから手に入るようになり
あっというまに終わってしまう。
電話帳にも載っていない、小さな養蜂所に
あわてて電話をする。
「アカシアの蜂蜜、一升瓶で、とっておいて下さい。」
そうそう、
もう一軒、別の電話、
「りんごの蜂蜜、おじさんが持ってきたら電話をください。」。
花の香りは、甘い、蜜の味がする。